なぜ那須へ向かったのか
「下を向く必要はない。ただ前を向くのみ。」
このメッセージを受け取ったのは、那須町の山中にある“シカの湯”を訪れたときのこと。
きっかけは、なんとなく「熱い温泉に入りたい」と思ったから。
でも、あとになって気づくんです。――身体が、そして心が、何かを手放したがっていたんだって。
この場所には“殺生石”や“温泉神社”、そして“綴り橋(つづりばし)”など、不思議なエネルギーを放つ場所が点在しています。
どこか異界に足を踏み入れたような空気。
車を降りた瞬間、ひんやりとした山の風が頬を撫でて、「ようこそ」とでも言っているようでした。
そして、何よりも印象に残っているのが――48度という灼熱の湯。
一瞬「無理かも」と思うほど熱い。けれど、不思議と身体がその熱を受け入れていく。
肌の奥の奥まで染み渡っていくような、そんな感覚。
まるで、自分の中にこびりついた“古い思考”を溶かしていくようでした。
綴り橋で感じた「怖さ」の中の真実
そのあとに立ち寄ったのが、綴り橋。
この橋がね、なかなかのスリルなんです。
足元は網目状になっていて、下が丸見え。しかも、揺れる。笑
最初の一歩を踏み出すのに、正直ためらいました。
でも、橋って“越える”象徴じゃないですか。
自分の中の「怖れ」を超えるとき、いつもこういう試練がやってくる。
そんなふうに感じながら、ゆっくりと歩を進めました。
途中、ふと下を見た瞬間――足がすくんだ。
「あ、落ちたらどうしよう」って。
でも次の瞬間、心の奥から声が聞こえたんです。
「下を向く必要はない。ただ前を向くのみ。」
それは、まるで自然が語りかけてくるようなメッセージ。
誰かの声というより、自分の中から響いた“確信”のようなものでした。
「下を向く」とエネルギーが止まる
あのとき、下を向いた瞬間に感じた“怖さ”は、日常でも起きていることなんだと思います。
たとえば、失敗したとき、人に否定されたとき、自信をなくしたとき。
私たちはつい下を向いてしまう。
だけど、下を向くと呼吸が浅くなり、身体も閉じてしまう。
エネルギーの流れが止まってしまうんです。
逆に、顔を上げて前を見つめるだけで、胸が開き、呼吸が戻ってくる。
それだけで、自律神経のバランスが整っていくのを感じることができる。
この感覚を、私はシカの湯の熱と綴り橋の風の中で体感しました。
つまり、今回の“怖さ”は、身体を通して自分に教えてくれたメッセージ。
「下を向いても、何も見えないよ。未来は前にしかない。」
そんな自然からのやさしい導きでした。
シカの湯の「48度」が教えてくれたこと
48度の湯。
ただの温泉と思うなかれ。
入る瞬間、全身の神経が一気に目を覚ます。
「熱い!」という刺激が、まるで心の鈍感になっていた部分を叩き起こしてくれる。
まさに“自律神経のリセット”のような体験です。
人間って、心が疲れてくると体温も下がるし、判断も鈍る。
でも、身体を先に“熱”で目覚めさせてあげると、自然と心も前を向けるようになる。
これは私が長年、身体と心の関係を見てきて感じる真理です。
温泉という自然の力は、単なるリラクゼーションではなく、
「心の再起動ボタン」なんだと思う。
自然はいつだって、正直な鏡
那須の自然は、静かで優しいけど、どこか厳しさも持っている。
殺生石の近くを歩くと、火山の硫黄の匂いがして、
「生と死」「陰と陽」が入り混じるような不思議な空気が漂っている。
その中で、自分の“いま”がすごくクリアに見えてくる。
不安も、焦りも、怖さも、全部が一度に浮き上がる。
けれど、だからこそ気づくんです。
「怖い」は悪いことじゃない。
“次の自分”へ進む前の、合図みたいなものなんだと。
私からの一言|怖いときこそ、顔を上げよう
人生って、綴り橋みたいなものかもしれません。
揺れるし、下を見ると怖いし、足元は不安定。
でも、それでも前に進まなきゃいけない瞬間がある。
そんなときこそ、思い出したい言葉。
「下を向く必要はない。ただ前を向くのみ。」
橋の向こうには、必ず新しい景色が待っている。
怖さを感じたあなたは、もうすでに“変化の入口”に立っているのかもしれません。
だから大丈夫。
顔を上げて、一歩を踏み出していこう。
人生一度きり、楽しんでいこう。