「自律神経を整える」と聞くと、
多くの人は呼吸法や瞑想、姿勢改善などを思い浮かべる。
けれど、僕は最近こう思うようになった。
——食事もまた、自律神経と深く関係しているのではないか?
このテーマに興味を持ったきっかけは、
施術やセッションの中で「食事を変えたら眠れるようになった」
「甘いものへの執着がなくなった」
という声をよく聞くようになったことだ。
自律神経の状態を整えようとするあまり、
心や姿勢ばかりに注目しがちだけど、
実は“栄養”という入口から見ても、
そのバランスは明確に読み取ることができる。
自律神経を動かしているのは「ホルモン」だった
自律神経とは、意識ではコントロールできない“もう一人の私”。
体温、血圧、心拍、消化、呼吸——
すべてを自動で調整してくれている、いわば体の司令塔だ。
そして、その働きを裏で支えているのが「ホルモン」。
つまり、自律神経の反応はホルモン分泌とセットで起きている。
たとえば——
- 交感神経が優位なとき:アドレナリン、コルチゾール、グルカゴン
- 副交感神経が優位なとき:セロトニン、メラトニン、インスリン
この関係を見るだけでも、自律神経と栄養学が
“切っても切れない関係”であることが分かる。
アドレナリンが多く分泌されれば、血糖を上げるために
エネルギー源として糖や脂質が必要になる。
一方、セロトニンが多いときは、
その原料となるトリプトファン(たとえば大豆やナッツなど)が求められる。
つまり、自律神経の状態によって、
体が求める栄養素そのものが変わるということだ。
栄養バランスは“固定”ではなく“変化”していい
ここで一つ、気づいてほしいことがある。
「栄養バランスの良い食事」は、
決して“毎日同じ”である必要はないということ。
むしろ毎日同じ食事を摂るということは、
その日の自律神経の状態を無視しているかもしれない。
たとえば、今日は朝からやたらと頭が冴えている日。
そんな日は交感神経が活発に働いている証拠で、
タンパク質や鉄、ビタミンB群を欲している可能性がある。
逆に、なぜか体が重くて何もしたくない日。
それは副交感神経が優位に働き、
リラックスモードに入っている証拠だ。
そんなときは、糖質や炭水化物、発酵食品などを求めることもある。
つまり、体が今どの神経モードにいるのかを感じ取り、
そこに合わせて食事を“選ぶ”ことこそが、
真の意味での「整える食事」なのだと思う。
自律神経と栄養がつくる“心の安定”
人はお腹が空くとイライラする。
甘いものを食べるとホッとする。
これは単なる気分の問題ではなく、
明確に神経伝達物質とホルモンの変化が関わっている。
たとえば、セロトニンは心を安定させる神経伝達物質。
原料となるトリプトファンは、
豆腐、納豆、チーズ、バナナなどに多く含まれる。
また、ビタミンB6やマグネシウムが足りないと、
セロトニンの合成自体がうまくいかなくなる。
つまり、
「心が落ち着かない」という状態の根底には、
“栄養の偏り”が潜んでいる可能性も高い。
自律神経の乱れは、
時に心理的なストレスではなく、
“体の素材不足”から起きているのかもしれない。
「整える」よりも「聴く」食事をしよう
僕は思う。
本当の意味で健康とは、
“整えること”ではなく、“感じ取ること”だと。
自律神経は毎日変化する。
だからこそ、
食事も日によって変化していい。
カラダが温かいものを求めたら、温かいスープを。
シャキッと動きたいなら、たんぱく質をしっかりと。
甘いものが欲しくなったら、
それはセロトニン不足のサインかもしれない。
そんな風に、体の声を聴きながら食べることで、
自然と自律神経のリズムも整っていく。
栄養学は、
「自律神経と対話するためのもう一つの言語」なのかもしれない。
私からの一言:体の声を“正解”にしよう
私たちはつい、「この栄養がいい」「これが悪い」と
頭で判断してしまいがちだ。
でも、体はもっと正直だ。
本当の意味で自律神経と仲良くなるとは、
“体の声を信じること”。
今日の食欲、眠気、緊張、イライラ——
それら全部が、自律神経からのメッセージだ。
「自律神経を整える食事法」なんて、
本当は存在しないのかもしれない。
それよりも、
“あなたの体が求めている食事”を感じ取れるようになること。
それこそが、
自律神経と栄養学の“最高のコラボレーション”だと思う。
人生一度きり、楽しんでいこうよ