「心の乱れは、食の乱れ」?自律神経と栄養のつながりに気づいたきっかけ

「なんであの人はいつもイライラしてるんだろう?」
以前の僕は、そんなふうに“性格”で人を見ていました。けれど、セラピストとして多くの身体に触れるうちに、単なる性格や気分の問題ではないケースがあることに気づいたんです。

あるとき、常に緊張して肩がカチカチのクライアントさんがいました。話を聞くと、毎日仕事中に甘いコーヒーを何杯も飲んでいるとのこと。
その瞬間、「あ、これ“心理栄養学”の視点で見たら説明がつくな」とピンときました。

心理栄養学とは、ヒトの“心の状態”と“食べ物”の関係を紐解く学問。
イライラ、落ち込み、不安、集中力の低下――。
こうした感情の背景には、栄養素のアンバランスが隠れていることがあるんです。
つまり、「心の問題」は“心だけ”では終わらない。
自律神経、そして日々の食が深く関わっているんです。


心理栄養学とは?|性格ではなく、栄養バランスの問題かもしれない

心理栄養学(Nutritional Psychology)は、欧米を中心に注目されている新しい学問領域です。
簡単に言えば、「食べたものが心をつくる」ということを科学的に見ていく分野。

たとえば――

  • イライラしやすい人は、血糖値の乱高下が激しい(=糖質の摂りすぎ)。
  • 不安になりやすい人は、マグネシウムやビタミンB群が不足している。
  • 落ち込みやすい人は、腸内環境が乱れている(=腸は“第二の脳”とも呼ばれる)。

こうした傾向は、すべて“栄養”という視点から見るとつながってきます。

僕が面白いと思うのは、これらがそのまま自律神経のバランスにも影響するということ。
つまり、「心理」「栄養」「神経」の3つは、実はぐるぐるとつながっているんです。


自律神経が乱れると、なぜ甘いものが欲しくなるのか?

ここで面白いのが、“どっちが先か”問題。

「イライラするから甘いものを食べる」のか、
「甘いものを食べすぎるからイライラする」のか。

答えは、どちらも正しいです。
なぜなら、交感神経が優位になっているとき――つまり緊張やストレスを感じているとき、身体は「落ち着きたい」「安心したい」と無意識にインスリン(=糖を処理するホルモン)を求めます。

だからこそ、疲れているときに甘いものを食べたくなるのは、実は身体からのSOSなんです。
問題は、それを“習慣化”してしまうこと。

甘いもので一時的に落ち着いても、血糖値が下がればまた交感神経が刺激され、イライラや不安が再発します。
これがいわゆる「血糖値ジェットコースター」。
そして、その裏にはいつも自律神経の乱れが隠れています。


「自律神経と遊ぶ」ための食との付き合い方

ここまで聞くと、「じゃあ何を食べればいいの?」と思うかもしれません。
でも、僕の考えはちょっと違っていて――
「食べ物を“コントロール”するより、“遊ぶ”感覚で付き合うこと」が大事だと思っています。

たとえば、
・いつも無意識で手が伸びるお菓子を、今日は一呼吸おいて選んでみる。
・カフェインや糖を摂る前に、水をひと口飲んでみる。
・ご飯の前に深呼吸をして、“いま食べるぞ”と身体に合図を送る。

こういう“小さな儀式”こそ、自律神経との対話なんです。
食べることは、ただ栄養を入れる行為ではなく、神経を整える時間でもあります。

もし、あなたが最近「なんとなく落ち着かない」「気分にムラがある」と感じているなら、
食事のリズムを見直すだけでも、驚くほど心が穏やかになります。


私からの一言|心を整えるなら、まず“食”を整える

心理栄養学を学んでいくと、心と身体の境界がだんだん曖昧になってきます。
イライラするのも、泣きたくなるのも、意志が弱いわけじゃない。
ただ、身体がその栄養を必要としているだけなんです。

そして、自律神経はそのメッセンジャーのような存在。
だから僕は、心を癒す前に「身体の声を聴く」ことを大事にしています。
その延長線上にあるのが、自律神経と“遊ぶ”という感覚です。

食べ物を通して、自分の神経のリズムを感じる。
それだけで、毎日は少し軽くなる。

「今日、何を食べたい?」
この問いを、自分の心と身体の“両方”に聞いてみる。
そこから、あなたの自律神経との“遊び”が始まると思います。

人生一度きり、遊んでいこう