1|なぜ「右脳と左脳」に興味を持ったのか
自律神経の施術をしていると、よくこんな現象にぶつかる。
——体は“もう限界だよ”って言ってるのに
——頭の中は“いや、まだいけるでしょ”って言い張る。
この「体 vs 頭」のズレ。
ある意味、人間らしいとも言えるんだけど…正直、ここが埋まらない限り、どれだけ身体的ケアをしても元のパターンに戻りやすい。
で、なんでこんなズレが起こるのか考えていたら、「左脳の使いすぎ問題」に辿りついた。
特に日本人は情報処理・分析・正解探しを得意とする民族で、知らず知らずのうちに“左脳優位な生き方”になりやすい。
その結果、右脳が扱う「直感」「体感」「内なる声」を聞き取りにくくなる。
つまり、“体が教えてくれる本音”をキャッチするアンテナが弱くなっている。
だから今回、「右脳と左脳のバランス」という切り口で自律神経の話をしたいと思った。
2|右脳と左脳の働きと、自律神経モードの関係
●左脳が強すぎると起きる“自律神経のズレ”
左脳はざっくり言えば
- 言語
- 思考
- 分析
- 計算
- ルール
こういった“社会的に求められる能力”を担う。
つまり、現代社会にいる限り、どうしたって左脳ばかり使うことになる。
左脳が過活動になるとどうなるか?
頭の声が強くなりすぎて、体の声が聞こえなくなる。
結果的に以下のような状態に陥りやすい:
- 交感神経が切れない
- 気づかないうちに息が浅くなる
- 休んでいても「休んでなさ」が残る
- 思考が止まらない
- 不安がつきまとう
- 自分の本音がわからない
要は、“身体感覚のモード”と“頭のモード”が一致しなくなる。
●右脳が働くと、体と心が同じ方向を向く
一方で右脳は
- 直感
- ひらめき
- イメージ
- 感情
- 体の声のキャッチ
こういう「内なるセンサー」を担当している。
右脳が目を覚ますと、
腹側迷走神経のスイッチが入りやすくなる。
なぜかというと、腹側迷走神経は安全・つながり・信頼を感じた時に働く神経だから。
右脳はまさに「安全」「心地よさ」「余白」を感じ取る天才で、
その感覚が脳幹レベルに届くことで自律神経のモードチェンジがスムーズになる。
だから右脳と左脳のバランスが整うと、自律神経の調整力が格段に上がる。
3|日本人に“左脳優位”が多い本当の理由
ここはよく誤解される部分なんだけど、
「左脳ばかり使うのは怠慢」とか「右脳使えてないのは鈍感」ではない。
環境的・文化的な要因がほとんどだ。
●①情報量が多すぎる
SNS、ニュース、LINE、返さなきゃいけないメッセージ、溜まっていくタスク…。
全部が左脳を使わせる。
気づいたら脳が「思考モード」から抜けられなくなっている。
●②日本人は“周りに合わせる”文化
これは完全に国民性。
日本は「空気を読む」「和を乱さない」「正しさを守る」文化だから、知らず知らずのうちに自分より相手を優先するクセがつく。
するとどうなるか?
自分の本音(右脳)が後回しになり、
社会的ペルソナ(左脳)が前に出るようになる。
結果、
身体感覚・内なる声が徐々に聞こえなくなる。
これ、施術していて本当に多い。
4|右脳を目覚めさせて「体の声」を取り戻す方法
ここからは、僕自身が普段のセッションで使っている“右脳スイッチの入れ方”をまとめて紹介する。
●①目のフォーカスを“外す”
人間は、何かを見つめているとき左脳が働く。
逆に、ぼーっと景色を見ると右脳が働きやすい。
だから
「遠くを見る」「ぼんやり眺める」
だけで右脳が優位になり、自律神経が緩む。
散歩中の“余白時間”がいい例。
●②音楽で意識を内側へ戻す
歌詞のある曲は左脳を使わせる。
歌詞のないアンビエント、自然音、周波数系は右脳が働きやすい。
ぼくがよく使うのは
- 虫の声
- 水の音
- シンギングボウル
- アンビエント音
ただ流すだけで、体が落ち着く。
●③体の“弱い刺激”に気づいてみる
強い刺激じゃなくていい。
- 服が触れる感覚
- 呼吸の温度差
- 足裏の接地
- 鼻を通る空気
- 背中の重さ
こういう微細な感覚を拾うと右脳が働く。
これは腹側迷走神経に直結する技でもある。
●④スマホを触らない5分をつくる
これが一番難しいんだけど、
一番効果がある。
スマホは“左脳の装置”みたいなものだから、
離れるだけでモードが戻る。
5|右脳と左脳を整えると「自律神経の声」が聞こえてくる
右脳と左脳のバランスが取れると何が起こるのか?
- 「今、本当に休みたいのか」がわかる
- 交感→腹側迷走への切り替えが速くなる
- 背側迷走モードに落ちにくくなる
- 感情と体の反応のズレが減る
- 無理する前に“予兆”が拾える
- 本音と建前の距離が縮まる
つまり、
“自律神経の声”がクリアになる。
身体が出しているサインが、
「なんとなくしんどい」ではなく
「これは交感神経だな」「これは背側だな」というレベルでわかってくる。
こうなると生きるのが一気に軽くなる。
■私からの一言(まとめ)
右脳と左脳の話って、単なる脳科学じゃない。
自律神経に直結しているし、
“自分という存在とどれだけつながれるか”という土台の部分でもある。
体の声を聞きたいなら、まず右脳のスイッチを入れること。
直感や感覚が戻ってくると、腹側迷走神経が働きやすくなり、人生の流れそのものがスムーズになる。
無理して左脳ばかり使ってきた人ほど、
右脳を休ませるだけで「本来の自分」が戻ってくる。
あなたの体の声は、まだ全然失われてない。
ただ——静かすぎて、聞こえてないだけだ。